日々、只、善き哉。 第三話 ~トードの雪遊び~ - 4/4

《おまけ》

(オリ)「う~寒い寒い……ストーブ焚いてるのに家の中が冷たいよ……」

(トド)「もう……そんなことないですよ?だいたい機関庫はもっと寒かったじゃないですか」

(オリ)「機関車の時はいいんだよ……。人間の体はなぜかすごくこたえるんだよ。ここは海風があるから、冬の寒さは寒いを通り越して痛いし……(靴下二枚履いちゃおうかなぁ)」

(トド)「寒がりですねぇ」

 毎度のことながら、オリバーの極端な寒がりに苦笑するトード。それからふと思い出したことを彼に話した。

(トド)「そう言えば、日本には『こたつ』っていういいものがあるらしいですよ」

(オリ)「こたつ……?何それ?」

(トド)「ヒロさんが言ってたんです。日本では冬と言ったらこれだっていうぐらい大人気の暖房器具だって。試してみたいなら、一つ貸してくれるそうです」

***

 そしてしばらくのち……。

(オリ)「これ?」

(トド)「はい」

(オリ)「何か不思議だなー……これ本当にあったかいの?」

(トド)「ヒロさんによれば『すごくいいもの』らしいですが」

(オリ)「ふーん」

(トド)「ここに入ればいいらしいです」

 と言われてこたつに入るオリバー。ちなみに下は畳マット。気がきくヒロが一緒に貸してくれたのだ。

(オリ)「……」(無言)

(トド)「僕も入ろうっと。あ、とってもあったかいじゃないですかー」

(オリ)「……」(じーっ)

(トド)「オリバーさん、どうですか?」

(オリ)「…………」(もぞもぞ)

(トド)(あ、あんまり気に入らなかったのかな……?)(汗)

(オリ)「…………えへへーっ」(パァァ……っ)

(トド)「あっ⁉この上ない最上の笑顔に⁉」

 その後。

(オリ)「僕もうしばらくここから動きたくないや。機関庫にもこたつあったらいいのに」(喜)

(トド)「気に入りすぎですよ。本当に寒がりなんだから……(でもよかった)」(苦笑)

 異国の暖房器具の便利さは、猫だけでなく寒がりも虜にする。今年は雪だるまではなく、こたつにこもりっきりになるオリバーであった。

今度こそ おしまい!


 『日々、只、善き哉。』第三話にしてたぶん最大の見せ場。最もブロマンス色というかもはや「恋人か?」って雰囲気が強くなっておりますがご了承ください。かつての私が書きたかったから書いたのです。今読むとふたりがピュアピュアすぎてこっちが気恥ずかしくなりますね……。

 そういえば作中の時間設定の話を、たぶん今までどこでもまったくしてなかったのですが、第一話開始の時点で本土からのオリバーの”脱走”(亡命)から概ね10年ほど経った1987年としています。途中、作中屈指のトリックスターというかヴィランであるディーゼル君が、ふたりに対してとんでもコンプライアンス違反な発言をしていますが、平和なソドー島とはいえ世の中いい人間ばかりではないので、なまじ人間と見た目が同じものになったがゆえに、この時代はこういう見方をする人も、少なからず世の中にはいたであろうという無駄なリアル思考でこうなっています。差別的な見方を肯定する意図は断じてありません。あとこの時のふたりにはマジで、我々人間と同等の「恋愛感情」というものが存在しません。

 もちろんディーゼル君をも貶める意図はないのですが、彼ならこう、諸々の理由で、他人に対する短絡的で過激な意見に染まってしまいそうな気がする。人間から悪い影響を受けた擬人化車両の代表だと思っていただければ。みんなはそうならないようにしようね!

 お気づきかと思いますが、筆者は自分含めてあんまり「人間」というものを”いいもの”だと思ってもないですし、そんな信用してもいません

 いろいろ語りましたが、真夏に再投下することになった真冬の話、楽しんでいただければ。何気に番外編を除けば、第一期の中で最長の話です。やっぱり当時の私これ書くの楽しかったんだろうなぁ。