5台の漂流車と浮世風呂 ~5 Drifters In A Bath~ - 2/3

 ザブーン。

(10)「ふー……天国です天国です……生き返った……」

 冬の浴室の床の冷たさマジ半端なかったので、さすがにダグラスも“命の湯”に 浸かった。

(9)「もう少しで本当に行けそうだったじゃないですか」

(10)「あんた本当に床より冷たいですね!!なんか恨みでもあるんですか!?私知らない間に何かしましたか!?」

(9)「何かと特定できないぐらいされまくってますけど、私はあの時、あんたを天国行きから救ってよかったと思いますよ」

(10)「ドナル……うぅ……」(感涙)

(9)「こうしてイジって遊べますから」

(10)「やっぱ今の取り消し!!」(怒)

 兄はどこまでも冷たいということに気づき、期待させられたダグラスは余計にキレた。

 しかしすぐに元に戻った。

(10)「しかしあれですな、やっぱりちょっと楽しかったですな」

(11)「だろ?意外と難しいよね!」

(9)「そんなに言うんなら私もやりましょうかね」

(10)(さっきのお返しだ押してやる……)(ニヤリ)

(T)(手伝いますよ……)(ニヤニヤ)

(11)「じゃあみんな乗り気だね!そう来なくっちゃ!よしやるぞ!第一回小西部サーキット・共同浴場杯開幕――――――」

(8)「こらーーーーーーーー!!!!」

 バァーン!!

 吹っ飛ばんばかりの勢いでドアが開いて、既に湯気が出ているダックが飛び込んできた。もちろん自分専用のシャンプーとボディーソープ、あとムダ毛処理用のカミソリとクリームも携行で。

(8)「夜中に騒がしいから何かと思ったら、そんなくだらないことに年甲斐もなく!!君らは本当大西部鉄道流ってのがなってないっ!!」

(10)「だって半分ぐらい部外車ですし」

(11)「逃げたときには再編&改名されてたよ」

 だいたい想定内だったし慣れてるので、冷静に答える該当車たち。ダックは怒り治まらずなおも文句を言い続けた。

(8)「こういうのはだな、まず水をかけて摩擦を極限まで減らして」(バシャバシャ)

(9)「……ねぇ、正直すっごくやりたかったでしょ?」

 普通に洗面器でお湯を掛けだしたダックに、ドナルドが静かに言った。

(8)「………………はい」

 ダックも手を止め、きまり悪そうに静かに答えた。

(9&10&11)「「「ウェーイwwww」」」(XD)

 ついに本音を漏らした彼に、皆はしてやったりと一気に相好を崩す。

(10)「やっぱりやりたかったんですねwあなたも結局ダメダメ流の仲間だ」

(11)「カーモンベイビーアヒルちゃん♡」

(T)「素直じゃないんだからもう♡」

(8)「うるさいなぁ!優等生ってのはこういう生物なんだよ!」(照)

 本当はバカ騒ぎしたいのがバレてしまって、苦笑いするしかないダック。

 何はともあれ委員長のお墨付きももらったので、5名は心おきなく『小西部サーキット』を楽しむことにした。

 そして……。

 バビューン!!

(8)「うぎゃぁぁ」

(T)「ダックさーん!!」

(8)「負けたぜ……ゴール出来るまで、止まるんじゃねぇぞ……」(ガクッ)

(T)「立てぇ!立つんだダックー!!」(叫)

(9)「カーブがあるからだめになるんですよ。左手と連結器は添えるだけ」

(11)「そだねー」

(10)「ダグラス、いっきまーす」

 ズシャァァァ!!

(10)「ウワーッ!ちくしょうめぇぇ!」

(9)「ダグラース!!」

(10)「駆逐してやる!この石から!摩擦係数を1N残らず!!」(悔)

(T)「オリバーさん!小西部サーキット、ゴールできません!!」

(11)「うわぁぁぁん!この流れを!!この流れを変えたぃぃぃ!!」

(9)「2分の1までじゃダメなんですか?」

(10)「もう……ゴールして……いいよね……」

(8)「諦めんなよ!」

 こうして小西部鉄道寮の、風呂場の夜は更けていったのだった……。

***

~翌日~

(2)「全員なんか歩き方おかしいけどどうしたの?」

(9&10&11)「「「……」」」

(T)「何でもないです……いてて……」

おわり。