5台の漂流車と浮世風呂 ~5 Drifters In A Bath~ - 1/3

※小西部(8&11&T+スコットランド双子)擬人化。

※脚本小説。地の文は洗い流した。

ギャグです。お下品なネタあり。風呂の話なので当然脱いでる。あとイギリスの公序良俗の設定がおかしい。ダメだこりゃってんなら裸足で逃げ出そうぜ!


 某月某日、“小西部鉄道”寮、P.M. 7:00――――――。

 ゴシゴシ

(T)「ふー……ようやくきれいになりましたね。年寄りの体にはこたえます」

 デッキブラシを手に風呂掃除をするトード。ようやく納得いくまで終わったのか、腰を伸ばしてトントンする。

 それから脱衣所に向かって大声で呼んだ。

(T)「オリバーさーん!時間ですよー!」

(11)「はーい」

 するともう一つ元気な声がして、ゴソゴソ音がした後風呂に入ってきた。

 ガラッ

(11)「ピカピカだねー。さすがトード」

(T)「ありがとうございます!あっ、僕も一緒に入りますねー」

 カコーン……

 お湯もちょうどいい加減に沸いて、オリバーとトードは一緒に風呂に入る。ここはソドー島の支線の一つ、“小西部鉄道”に所属する(車両たちが何か分からんが人間化してしまったなれの果ての)男子たちの共同浴場である。平均精神年齢の低い本線組に比べれば、大人でハイソで基本プライド高い彼ら。よって紳士の身だしなみとして毎晩ちゃんと風呂に入るのである。

(11)「悪いね、せっかくの一番風呂なのに邪魔しちゃって」

(T)「いいんですよー。裸の付き合いって言うじゃないですか。僕らの間で今さら……それに」

 トードはなぜか言い淀んだ後、急に真剣な表情で言った。

(T)「ひとりで一番風呂に入ると死ぬ確率が上がりますので」(ボソッ)

(11)「リアルで縁起でもないこと言わないで;」

 温度差ってのは意外と侮れないのである。読者の諸君もヒートショックには十分留意されたし。

(11)「♪ベッドの~周りに♪何もかも脱ぎ散らして~」

(T)「♪週末~だけ~の♪秘密のお部屋~」

(11)「その次忘れた……」

(T)「……誰もフルで歌えない曲でしたね、これ」

 歌詞の内容ともにチョイスを間違ったと言わざるを得ない。まあ鼻歌ってのはそんなもんである。

 備え付けのシャンプーとボディーソープでがしがし体を洗った後、一気にシャワーで流して、オリバーは椅子を立った。

(11)「よーし、ひとしきり洗い終わったぞ。寒いから浸かるねー」

 南方寄りで育った彼はえらく寒がりなので、早く湯に入りたいらしい。ところがトードは眉をしかめた。

(T)「もう洗い終わったんですか?早くないですか?せっかくお湯張ったばかりの一番風呂なのに、汚さないでくださいよ」

(11)「あのさぁ、子供じゃないんだから。ちゃんと洗ったよ」

 こちらも不機嫌に眉をしかめるオリバーに、トードはなおも追撃する。

(T)「本当ですか?全部残さず?足も耳の裏もお尻もお〇んちんも全部洗いました?中はアカが溜まりやすいんですよ?……ああやっぱり僕がいないとダメですね、洗ってあげましょうか」(ぐいー)

(11)「ちょっと何するんだよ!!そんなとこ気安く触るなよ!!それに子供みたいなのは君の方だろ!」

(T)「子供みたいで悪かったですねぇぇ!!どうせ猫も皮もかぶってますよ!!でも一皮むいたら頭脳と精神とテクニックはちゃんと大人ですからねっっ!今から教えてあげてもいいんですよ、大人の駆け引きってやつを……ねぇチェリーさん。じゃなかったオリバーさん」(ニヤニヤ)

(11)「いやぁぁやめてぇぇぇ;すでに裸なのにこれ以上脱がさないでぇ―――――」(泣)

 妙なところから仲良く(?)喧嘩を始めるふたり。その時脱衣所の方でまた別の物音が聞こえてきた。

 ガラッ

(9)「おっ、いつも通り先客が」

(10)「裸で失礼しますよー。お疲れ様です―――――――」

 ドアが開いて、ドナルドとダグラスが堂々と入ってきた。

 そして洗い場の光景を見て言葉を失くした。

(9)「お取込み中でしたか、どうもお邪魔しました」(冷たい目)

(11)「違うよ!!」

(10)「風呂場で致すなんて衛生とマナーがなってないですぞ!!っていうか私も入れてください!!」

(9&11)「「はぁぁぁ!?」」

(T)「えーと……どっちの意味ですか?」

 泥沼が生まれそうだったので、当事車二台はいったん冷静になって説明した。

(11)「ちょっと行き違いがあっただけだからな!勝手に誤解しないでよ」

(10)「イキ違いとな?」(ニヤニヤ)

(9)「李下に冠を正さずって言うじゃありませんか。各自スモモはしまってください」

(11)「いいからもう黙ってて!!」(赤面)

 同性同士でもギリギリアウトなので、オリバーはふたりを黙らせた。

(T)「っていうかおふたりとも、いくら同性同士でも前ぐらい隠してくださいよー……ダビデ像じゃないんですから」

 トードが指摘すると、双子は何が気に入らなかったのか急に怒り出した。

(9)「誰がダビデ像ですと!あれはタオルじゃなくて投石器ですぞ!温泉ダイブを讃えた彫刻じゃないんです」  ※筆者注:由来は長いからググって

(10)「トードにしては珍しく教養が足りませんな!それにダビデ像だったらそこの発育不良の方が合ってるでしょう!」

(11)「誰が発育不良だよ!立派に育ってるよ!このシックスパックが目に入らぬか!」(ムキっ)

(10)「ああ確かに立派ですな、シックスパックの(シモ)のモノもね」

(11)「きゃーっ変態///!」(ばっ!)

(9&10)「「いや、遅い遅い」」(ツッコミ)

(T)「でも確かにオリバーさんって雰囲気ダビデですよね」

(11)「雰囲気ダビデって何だよ」

(10)「ちょっと立ってみてくださいよ。ダビデ像みたいに」

(11)「えーっ……ちょっとだけだよ?あんたも好きね」

 ――――スッ

(11)「はい、ダビデ像」

(9&10)「「似てるーwww」」(爆笑)

(T)「これ今年の忘年会のネタにしましょ!」

(11)「さすがに公然わいせつで捕まるよ!!よくても島中の女子から袋叩きだよ!?」

 オリバーは慌てて投石器、もといタオルで局部を隠した。

 イギリスの浴場をトルコ風呂にする気はないので、全員おとなしくお湯に入る。

(9)「ダグラスもっとあっちへ行ってください」

(10)「嫌ですよ。私は十分遠慮してます。そっちが足縮めてくださいよ」

(11)「っていうかふたりとも縮めてよ、僕らが狭いんだよ~!」

(9)「えー、あなた達はもう十分浸かったでしょ?譲ってくださいよ。のぼせますよ」

(T)「あっ、じゃあ僕が外に」

(10)「トードはこっちへどうぞ」

 ――――スポッ

 トードは招かれるまま、ダグラスの脚の間に座った。

(10)「おお、これはいいですぞ!サイズ感がぴったり♡」

(T)「いいですね!特等席です♡しかも柔らか♡」

(9)「ダギーばっかりずるいですぞ!私にも貸してください」

 この(見た目は)可愛いブレーキ車は要するに、小西部の中じゃマスコット的な扱いである。まるでゆるキャラとそのファンのように、双子とブレーキ車はキャッキャし始めた。

 一方面白くないのはオリバーである。

(11)「なんだよ裏切り者!!勝手によろしくやるなよ!!僕もそっちへ入れてよ!!」

(9)「嫌ですよ、あなたトードより重いんですもの。ということでとっとと出てください、茹でオリーブになる前に」(笑)

 オリバーは若干ヤバい目つき(復讐的な意味で)をして浴槽の縁に出た。未練たらしくまたがって湯に片足を漬けていたが、そのうち何か他のことに夢中になり、縁のつるつる加減を念入りに確かめたあと唐突にこう言いだした。

(11)「ねぇねぇ、ここからこう蹴り出して、滑って向こうの端まで行けると思う?」

(9&10&T)「「「は?」」」

 いきなりわけが分からないよな発言に、一同は眉をひそめる。

 オリバーは続けた。

(11)「いや、ここわりと広いし磨いてあるから、こう乗って思いっきり蹴ったらつるーって向こうまで行けるかなってw」

(9)「何ですかその馬鹿な遊びは……何の意義もないじゃないですか」

(T)「でも遊びっていうのはそんなものですよ。高い知能を持つ生物には必要なんですよ」

(11)「えっへん!僕って賢いからね!」(慢)

(9)「お黙りなさい。また痛い目に遭いますよ」

 警告するドナルドとは裏腹に、ダグラスは妙に乗り気である。

(10)「面白そうですね!ちょっとやってみてくださいよ!」

(11)「任せてよ。いくよー」

 調子に乗ったオリバーは浴槽の縁に馬乗りになり、思いっきり壁を蹴った。

 ターン!

 ――――――ズベシャァァ!!

(11)「うわーっっ!」(――――ステーン!)

(T)「オリバーさーん!!」

(11)「ひやぁぁぁつべたいぃぃ!!トード早くそっちへ入れて!!」(震)

 しかし到達は叶うどころか、たいして進まず縁から転げ落ちた。

 思った通りの結果に終わり、オリバーは慌てて浴槽に飛び込んだ。

 ザブーン。

(11)「ふぅ、生き返った……“命の湯”だ……」

(9)「ほれご覧なさい。懲りない奴ですね」

(10)「オリバーのお馬鹿さん♪お利口ぶって♪」

(11)「三フレーズ目歌ったらどうなるか分かってんだろな」(睨)

(10)「えっ、あっ、はい……すみません」(謝)

 事の顛末を知ってるダグラスは、すぐさま小さくなって謝罪した。

(T)「もっと勢いよく蹴ったらいいかもしれませんよ」

(9)「やってみましょうか」(ひょいっ)

(10)「ちょっと、なんで私なんですか!?」

 自分ではなく片割れをつまみ上げたドナルドに、ダグラスは猛抗議した。何ら意に介することもなく、ドナルドは涼しげに言う。

(9)「だって面白そうって言ってたじゃないですか。ついでに押してあげますから、それっ!!」

(10)「いぃやぁぁぁぁ」

 ズシャァァァッ!!

(10)「ぎゃぁあぁぁぁぁ!!しばれるぅぅぅ―――――ぶっ」(ゴチーン☆)

(11)「ダグラスー!!」

 カーブで遠心力に振り回されて、ダグラスは派手に吹っ飛んだ。ボウリングよろしくシャンプー類をかっ飛ばした後、向かい側の壁にぶつかってようやく止まった。

(10)「壁に頭が……そして連結器が……」

(9)「連結器がどうだったんですか?」

(10)「も……もげる……」

(9)「安心してください、ついてますよ。縮んだけど」

(11&T)((身内にも容赦ないな……))

 二度の失敗を経て、彼らはレース結果を口々に振り返る。

(11)「カーリングの石みたいに吹っ飛んでいったよ」

(T)「カーリングストーンズ」

(9)「w」(ややウケ)

(10)「助けてくださいよ!!」(怒)